2015年5月6日水曜日

「植物に肥料はいらない」



先日、ポール・スミザー氏の講演会を聴いてきた。NHKのプロフェッショナルにも出演した人。
彼の言葉の中でひっきりなしに出てきたのは、「植物に肥料はいらない」だった。
番組の中ではそんな話はしていなかったように思う。やはり番組上言えないことも多いのだろう。

彼はスライド写真を見せながら、おもしろおかしく話す。
山の中に放置された小屋のトタン屋根にケヤキや楓やナラなどの木が育っている写真をみせて、
「ね?ここにだれかがぽーんとトタン屋根の上にハイポネックスをまきましたか?だーれもまいてないでしょ?かれらはそこに落ちた落ち葉や微生物で育って行くんです」

イギリスで庭師として勉強をしてきた彼が日本にやってきた。山に入ってビックリしたと言う。
「イギリスであこがれのギボウシが、日本の山のあっちゃこっちゃにはえている。うわ!これ2000円もする品種。ええ~~っ、これなんか3000円のやつ!と、まあ、おちおち休んでもいられないくらいそこかしこに高級な植物たちであふれてるんです!」

岩のあいだにはえてくる「イギリスの高級品種」をしらべるうちに、彼らはわずかな隙間とわずかな土でしっかり根を広げ大きく育っていることに気がついたそうだ。
それで彼が造る庭は、そんな自然の状態に近いものだ。砕石を敷いた中に苗を入れ、その上にバークチップをまく。それだけで2、3年もすればステキなナチュラルガーデンになっている。

ドイツで150年にわたって植物の実験をしているところがあるそうだ。肥料を入れたところと、肥料なしのところをつくり、その植生を調べているという。肥料が入ると、その場所にはその肥料に合った植物だけが育つ。ところがそこに虫がやって来ると、あっというまに絶滅する。
だが肥料なしの場所は、ありとあらゆる種類の植生になる。もし虫に食われても、一種類だけのことなので、その場所が絶滅することはないという。

肥料を入れると単一化するというのはおもしろい話だ。農家にとっては嬉しい効果だろう。だけどいったん虫に食われると、あっという間に消えていく。だから農薬が必要なのだ。肥料は農薬とセットになっている。お金儲けのためにはいい考えだ。
やまんばの畑にやって来る虫は、弱いと虫が判断したものについているようにみえる。全滅させられることはない。

「庭に咲く大きなギボウシをみて、おばちゃんが聴くんですよ。『まあ立派。何の肥料を入れているんですか?』って。いや、肥料は入れてないんですよ~っていうと、『そうなの?それで肥料はどんなものを?』って。だから、入れてないんですよ~って。するとおばちゃんは向こうの方にいるスタッフにまた聴くんです。『肥料はなにを?』と。どれだけ洗脳されているかってことです。園芸本に書いてある、肥料を一週間に何回とか1ヶ月に何回とか、いーーーーっさい無視してください!」という。

人々が肥料に洗脳されているのはやまんばもわかる。
近所のオヤジが何度も聴く。
「それで?肥料はなに入れてんだ?」
「入れてないって、いったでしょ?」
「ウソコケ。ほんとは入れてるだろ」
「だから入れてないんだってば!」
人が肥料を入れてないことが不安らしい(笑)。



イギリスではその花を語らせたら何時間も語ってしまうくらいオタクが好きな花があるらしい。それがアイリスジャポニカ。よーするにシャガだ。シャガなんてここらにあちこちにはえている。

やまんばの畑の近所の山にうわーっといっぱい咲いていた。日影でもどこでも育つようなので、数本庭にちょうだいする。スコップをつっこんでビックリした。がれきしかない。土らしいものがほとんどないのだ。スコップなんかつっこまなくったってすぐひっこぬけるくらい。そんな環境でもぐんぐん勢力を伸ばしている。ポールが言ったとおりだ。
植物の底知れぬ力強さを教えられる。


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