2011年8月10日水曜日

怪談は無形文化だなあ〜





いや〜楽しかった~。
舞台美術家の江頭良年さんが手がけた稲川淳二さんの『怪談ナイト』を見てきた。

江頭さんが稲川さんの舞台を手がけ始めて7年ぐらいになるという。
舞台は毎年設定を変える。彼が演出した舞台をバックに、稲川さんが怪談話をするというもの。今回はどんな演出?それは見てのお楽しみ。いやはや、ほんとに本物そっくりに作り込んである。あれは○○だと思っていたら、「あれは布だよ」という。近くで見たって色といい、さびといい、○○にしか見えない。なにげないところに紙が挟んであったり、昔の牛乳瓶の木箱がかけてあったり、そしてコンクリートの間からのぞく雑草まで!その繊細な仕掛けが、舞台の雰囲気を見事に演出している。本当に手を抜いてないほんまもんのお仕事を見せていただきました。

稲川さんは、謙虚なお人柄。お肌つやつやしてテレビで見るより、はるかに若い人だった。彼は言う。「江頭さんの作ってくれた舞台で、私は何も演出する事がない。もうその中に入るだけでいいんです。」
それは彼の舞台の空間作りが、非常に心地よい、理にかなったものだと言う事だ。稲川さんはその中に立つだけで、その空気感の中に入るだけで、すでに怪談話がはじまっているのだ。

稲川さんは、舞台のお話の中で、怪談には日本人の感性があるとおっしゃっていた。暗がりの中でふと聞く足音、雨水のたれる音、風がイタズラをする音、ふっとにおうお線香のにおい、遠くにぼんやり光る明かり。。。その一つ一つに日本人は感覚を研ぎすませ、そこに物語を見る。これはまさに日本人ならではの、りっぱな文化だ。

私は怪談話と聞けば「こわ~い!」としか思わなかったが、彼の一言でハッとさせられた。これは日本のエンターテインメントなのだ。心霊写真もたのしんでくれ!という。なるほど。そういう「楽しみ方」もあるのだ。日本人は昔から、繰り返しの多い普段の生活の中に、ハッとしたり、ぞくっとしたり、悲しんだり、笑ったりしてハレの瞬間を作り、そこに新鮮な空気を入れ、生きてぬいて来たのだ。と同時に、雨音一つに世界が広がる感性を養って来たのだ。心霊写真を楽しまんでなんとする!(やっぱりこわいけど)

普段の生活とは違う演出された異空間と、無形文化とも言える日本の怪談話。この二つの日本の文化を満喫できたぜいたくな時間だった。

ちなみにその夜は寝られたかって?
寝たよ~。だって日本の文化を味わったんだもん。

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